株式会社Autonomyは株式会社AutonomyHDグループの一員であり、完全オリジナルのオートパイロットを搭載した国産産業用ドローンを専属で販売しています。また、産業用講習・業務委託をはじめとした、各種アフターサービス等の関連事業も行っています。 ※APの開発・製造は株式会社AutonomyHDが行っています。
 

設立について

~AutonomyHD 代表取締役CEO野波健蔵氏のグループ創業の経緯と展望より抜粋~

ドローンを鳥のように飛ばしたいという話が時々あるが、そもそも鳥とドローンはどこが同じでどこが違うかという命題がある。重力に逆らって空を飛行する鳥や昆虫、航空機、ドローンは翼で自重を支えており、翼が発生する持ち上げる力、いわゆる揚力は全く同じ物理法則に従っている。翼が発生する揚力は翼の寸法、対気速度、空気密度、飛行方向に対する翼の角度で決まる。この揚力は翼を真上から投影した表面積に比例し、この表面積が2倍あれば2倍の重さを運ぶことができる。同じ物理法則とはW=0.3dV2Sである。ここで、係数0.3は翼の迎え角に関連した定数で、長距離飛行をする鳥や飛行機は平均的に迎え角6°にするとこの数値となる。ここで、dは空気密度[㎏/m3]、Vは対気速度[m/s]、Sは翼面積[m2]を表す。結局、この式から航空機やドローンも鳥や昆虫も自重を支えて自在に大空を飛ぶためには、dは一定なので、翼面積を大きくするより飛行速度を上げた方が2乗の効果があるため、効率良く自重を支えられることが分かる

それでは、鳥とドローンの大きな違いは何か?それは、エネルギー効率の違いである。ハチドリが1時間ホバリングすると仮定すると、300ジュールのエネルギが必要となるが、花蜜は1gあたり1.8kジュール(J)のエネルギーを有しているため、1gの密で6時間のホバリングが可能となる。すなわち生物が作り出すバイオエネルギーの驚異的な性能が際立つことになる。ドローン等で活用されているリチウムイオンなどのバッテリは多めに換算して0.3kwh/kgのエネルギー密度で、1kwh=3600 kJであるため、1080kジュールに相当している。密1g= 1.8kJに換算すると鳥や昆虫は2倍のエネルギー密度である。

本質的な差は知能であろう。鳥や昆虫は優れた環境認識能力や判断力を有するが、現在のドローンにはその能力がない。昆虫が地上に出現して約4 億年といわれ、鳥の祖先である始祖鳥が出現して1 億 4 千万年になる。それから気の遠くなるような進化を遂げて、環境認識能力、意思決定能力、学習しながらの知的能力を獲得してきた。もし獲得できなかったならば、絶滅したであろう。鳥や昆虫は空を飛ぶことで天敵から逃げ延び、絶滅から免れて種の保存を果たしてきた。

図1は鳥や昆虫と現状のドローンの飛行の違いを示している。現在のドローンは人に例えると、運動神経と平衡感覚のみ有する小脳型ドローンである。一方、鳥や昆虫は本能的な環境認識能力、意思決定能力である大脳を有している。現在のドローンには環境認識能力や意思決定能力が無いことは自明である。

図1 大脳・小脳を有する近未来ドローン

図1の大脳・小脳という生物学的機能を工学的機能に置き換えると、図2のような記載となる。一般に自律型移動ロボットの場合は、図2のような機能を実装する必要があり、これらの総称はオートパイロット(AP)と呼ばれる。図2を飛行ロボットであるドローンについて考えると、高度に自律化された飛行の場合、たとえば障害物を回避しながら自ら経路生成を実時間で実行しながら飛行できるガイダンス(GS:誘導)が必要で、様々なセンサ情報を基礎にして自己位置を推定するナビゲーション(NS:航法)の機能と、経路追従のための飛行制御(FC)が必要となる。このように、自律性を高度化するためにはハードウエアとソフトウェアの一体システムであるAPの高度化と知能化が極めて重要となる。

図2 オートパイロット(AP) とGS,NS,FC

AP はその一部に飛行制御器(FC)を含んでおり、APはいわば高度な上位の概念であり、有人航空機の熟練パイロットのミッションも包括している。有人航空機では熟練したパイロットがコックピットに表示された様々な計器のデータから飛行時の異常を検知予見し、天候や障害物などの環境認識と意思決定を行っているが、ドローンではパイロットレスのため、このGS機能が現時点ではほぼ無いに等しい。大脳を有するドローンとはこのことであり、熟練したパイロットに相当するGS機能を実装することに他ならない。例えば、物流ドローンに見られるように自律制御飛行のレベルが高度化して監視者なし目視外飛行かつ長距離飛行となると、GS、NS、FCが決定的な飛行性能を決めることになる。現在のドローンはGSがない、NSとFCのみによる小脳型ドローンと言っても差し支えない。冒頭の「ドローンを鳥のように飛ばす」ためには、GSを実装しなければならいということになる。これによって、鳥が飛行中に落ちたということが無いように、ドローンも飛行中に墜落することは無くなる。

鳥や昆虫が有するこのようなGS機能はどのようにして実装されるかであるが、鳥や昆虫の飛行でも明らかなように、画像処理による学習と経験の蓄積となる。簡単な画像処理程度はコンピュータビジョン(CV)で対応できるが、複雑な自然環境の認識となると CV では対応できなくなり、クラウドベースも含むマシンラーニング(ML)やディープラーニング(DL)に基づく人工知能(AI)による支援が必須となる。この意味で、大脳型ドローンは高度化した AI の支援によって実現されると思われる。こうした高度化された AI 機能により、鳥や昆虫の飛行のように、もはや墜落という事態は完全に回避される飛行になる。鳥や昆虫は風が強すぎる場合や、体調が悪かれば飛行しないのと同様に異常があれば離陸しないドローンとなる。

図3は自律性のクラスを5段階で示している。現在はクラス3であるが、完全自律性のクラス5では目的地だけ入力すれば最適飛行経路の選定を自ら行い、飛行中の異常診断を行う「大脳を有するドローン」が、2030年代には都市部上空を飛行するであろう。全固体電池が登場すれば、エネルギー効率も鳥に近づき、鳥の飛行のように飛行速度に合わせて翼面積を変える可変翼ドローンも登場するであろう。2030年代には数十機の編隊を組んだ飛行や、スワーム飛行という群れ飛行型の知能を有する物流ドローンが都市部上空を整然と飛行しているに違いない。この頃にはドローンの大型化したパイロットレスの乗客用ドローンも登場しているだろう。

図3 ドローンの自律性クラス

株式会社Autonomyは、上記に述べた2030年代に登場すると予想される完全自律型の飛行を目指した、高度な自律性を有する飛行ロボット・ドローンや移動ロボットの研究開発製造をする株式会社AutonomyHDから販売を行うために設立された会社です。